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ダルマ・ライフ

Alan Clements (アラン・クレメンツ)著/三木直子訳

(原題: Instinct For Freedom)

Instinct cover

『ダルマ・ライフ
—日々の生活に”自由”を見つける方法—』

<訳者あとがき>

この本を翻訳しながら、私はどういうわけか、はるか昔、高校生の頃に読んだことのあるヘッセの『シッダールタ』を思い出していた。読んだとき自分がひどく感銘を受けた、という記憶はあるものの、物語自体は漠然としか覚えていない本だった。再読して、納得した。

仏陀という覚者に出会いながら、彼に付き従うことをせず、俗にまみれた人生を送ることを選んだシッダールタが、年老いて川の渡し守となり、旧友ゴーヴィンダに再会してこんなことを言うくだりがある。
「ゴーヴィンダよ、世界は不完全ではない。完全さへのゆるやかな道をたどっているのでもない。いや、世界は瞬間瞬間に完全なのだ。(中略)それゆえ、存在するものは、私にはよいと見える。死は生と、罪は聖と、賢は愚と見える。いっさいはそうなければならない。いっさいはただ私の賛意、私の好意、愛のこもった同意を必要とするだけだ。そうすれば、いっさいは私にとってよくなり、私をそこなうことは決してあり得ない」(新潮文庫、高橋健二訳)。
おそらく私には、クレメンツの生き様と、言葉や教義よりも「生きること」を自分の師として悟りに至ったシッダールタとが、重なって見えたのだ。

クレメンツは自らを「霊的一匹狼」と呼ぶ。権威に従うことが好きで、マニュアルさえあれば安心しがちな日本人にとっては、クレメンツの生き方は不遜に見えるかもしれない。が、私はそうは思わない。

クレメンツは瞑想の修養を否定しないばかりか、それが彼の土台となっている、と言っている。だが、どんなグルについて学んだからといって、悟りが約束されるわけではない。良い導きがあれば悟りへの道は平らかなものとはなるかもしれない。が、結局のところ、悟りは人に与えてもらえるものではなく、ただ自分自身の経験のみが自分を悟りに導けるのだ。むしろ私たちは、そうすることを選びさえすれば、日々の生活の中で、自分の人生を生きる、ただそのことの中で、悟りに続く道を歩むことができる。そして人が十人いれば、悟りに至る道もまた十通りあって当然なのだ。

だが、何のために?
 
悟りや気づきに関する本を色々読んでいると、ふと「何のために?」という疑問が頭に浮かぶことがある。

一般に、人は自分が抱える悩みや苦しみから解放されるために精神修養や瞑想を始めることが多い。そうして悟りと言われる境地に達して、さて、それからその人はどう生きるべきなのか? 悟りに至る、つまり絶対の真実を知る、ということは、それ以降のその人の人生をどんなふうに変えるのか? この本は、その問いにひとつの答えを示している。 

仏陀が生きたのは今から 2600年前のことだ。2600年を経た今も、人が自分の苦しみから逃れるために悟りを求めるのは変わらない。違うのは我々が生きる地球という星の状況だ。今や我々は、自分たち自身を含め、惑星ごと破壊できる能力と手段を手にしてしまった。このまま無自覚に進んでいけば、人類は本当に滅亡を免れない。そういう時代にあって、「悟りを得る」ということが持つ意味もまた、2600年前とは変わっているはずだ。

クレメンツにとって、悟りを得るとは、すべての生命は繋がっており、他者の犠牲の上に真の幸福はあり得ないという認識に至る、ということを意味した。そしてそれが彼を、ビルマ(現ミャンマー)における民主化・人権運動への参加という行動に突き動かした。精神、内面の自由(悟り)が物理的な自由の擁護への引き金となったのだ。

悟りを得た人が一人残らず、クレメンツのような活動家になるべきだと言っているのではもちろんない。けれども、人間の社会的営みの変革は、それを構成する人間ひとりひとりの精神の変革なしにはあり得ないのは事実だろう。この本は、浮世離れした現実逃避型の「悟り」ではなく、地に足をつけた「覚醒」が、現代社会が抱える問題の解決にどんな役割を果たし得るのか、そのことを考えさせてくれる。クレメンツほど過激に運動に身を投じることはなくとも、我々ひとりひとりが無気力や怖れから解放され、自覚を持って生き、意志を持って行動することが変化を生む—そのことの重要さに気づかせてくれる、精神性と社会性を併せ持った一冊である。
 

春秋社より2009年 1月発売。

ご購入はここ からどうぞ。

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