ネコ学入門:猫言語・幼猫体験・尿スプレー
三木直子訳
(原題: Cat Whisperer)
<著者紹介>
本書の著者、クレア・ベサントは、 インターナショナル・キャットケア という慈善団体の代表を20年近く務める。1958年、熱烈な猫愛好家達によって Feline Advisory Bureau という名で設立されたこの団体は、イギリスに本拠があり、世界中の猫の飼い主、ブリーダー、獣医、あるいは野良猫を世話する人たちに対して、正しい猫の飼い方、扱い方についての情報を提供し、医療技術の進歩や動物愛護キャンペーンを支援する活動を活発に行なっている。たとえば、アメリカに本拠を置き、キャットショーの開催を主な目的とする The Cat Fancier’s Association などとは異なり、専ら猫とその飼い主の生活の向上に活動の重点を置く。
本書によれば、イギリスでペットとして飼われている猫の数は犬より多い。ただしこれは本書が書かれた2002年以前の数字で、最新の統計では両者の数字は拮抗しているようだ。だが、イギリスに野良犬がいるとは考えにくいのに対して野良猫はたくさんいるわけだから、人間のそばで暮らす動物、という意味ではやはり猫のほうが多いだろう。正直なところ、イギリスで猫がペットとしてこれほど人気だとは知らなかったが、考えてみれば、『不思議の国のアリス』のチェシャ猫、ポーの『黒猫』から、ハリー・ポッター・シリーズのクルックシャンクスまで、イギリス文学で最初に頭に浮かぶのは犬よりもむしろ猫かもしれない。それほどに、昔から猫はイギリス人にとって身近な存在だった(それに、魔女のペットは黒猫と決まっている)。
昔から身近なところに猫がいたという点では日本も決して負けていないと思うが、共に生活する生き物としての猫を科学的に理解し、その生活環境を最良のものにしようという努力において、現在、イギリスをはじめとする欧米は日本の一歩先を行っているように思える。たとえば原書に出てくる cattery という言葉で画像検索してみるといい。旅行などで留守にする飼い主が猫を預ける、いわばペットホテルであるが、その充実ぶりに驚く。そういう国の飼い猫事情を覗き見ることができるという意味でも本書は興味深い。
(訳者あとがきより抜粋)
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